非行問題の解決事例 「挫折」から「悪い先輩との夜遊び」へ。しかし・・・

非行問題の解決事例

サッカーを頑張っていた子に或る日とつぜん悲劇が!

S太は小学校からずっとサッカーを続けてきた。チームのエースストライカーで将来も有望視されていた。もちろん、中学生になってもサッカー部に入り、一年生のうちにレギュラーの座も獲得した。非行とは全く無縁な子だったのだ。そんなS太を悲劇がおそったのは中2の4月だった。練習中に利き足を骨折してしまったのだ。しかも、全治数カ月。

ここからS太の非行傾向が始まった。

なんとか不登校にはなっていないものの、毎晩のように「先輩と遊んでくる」と家を出ては、帰宅時間が日に日に遅くなっていった。「先輩」と呼ばれている相手の目星はだいたいついている。中学校の先生や警察からも目をつけられている一年上のK雄だ。S太の両親はすぐさまK雄とのつき合いを反対し、思いつくかぎりのK雄の悪口を言い、なんとか縁を切らせようと努力した。しかし、S太は反省するどころか、K雄をけなせばけなすほど親への反抗をつよめ、ついには親と顔をあわせるのも挨拶すらするのを嫌がるようになった。夏休みに入ると非行問題はいっそう深刻になっていった。親子の会話はほとんど無くなり、タバコ・ピアス・朝帰りと、みるみる非行度はエスカレートしていった。次第に両親の根気もうすれ、半ばあきらめムードが漂っていたところで、カウンセリングがスタートしたのだった。

S太のように「挫折」をきっかけに非行に走る子は多い。そして、「ぬけがら」「なげやり」に近い状態の子に、「サッカーがダメなら勉強でがんばれ」と励ます両親との間に大きな温度差(気持ちの差)が生じてしまう。皮肉なことに、そんな気持ちでいるときに限って、K雄のような不良・非行連中から「甘い声」がかかってしまうのだ。

 

非行問題解決の前に、S太と両親との膠着(こうちゃく)状態を何とかするため、カウンセラーは一つの課題を両親に出した。「親子の接点さがし」である。「テーマは何でもけっこうです。S太くんがよく口にする話題の中で、ご両親にも興味がもてるものを探して下さい。そして、次回までにその話が弾むようにがんばって下さい」。

両親は、課題の理由をカウンセラーから説明をうけたものの、それで息子の非行行動が良くなるのかどうか半信半疑だった。しかし、今のままでは良くならないことはわかっていた。父親は「サッカー」、母親は「晩ごはん」をそれぞれ話題に選ぶことになった。

一週間後の面接日。S太は最初こそノリが悪かったものの、父親との間でサッカーの話題で盛り上がるようになり、週末にはJリーグの試合を見に行く約束まで取りつけた。母親は、前々から晩ごはんのメニューや味付けに、いちいち口出しするS太をうっとおしく思っていた。それを今までは違って「聞いてやる=言わせてやる」ことにした。その結果、「文句はいっそう増えました。でも前のようにイヤそうな顔じゃないし、文句を言いながらもパクパク食べるんです」。そうです。まずは親子の会話が復活したのです。

両親ともに熱心に取り組んだため、最初の課題から大成功である。カウンセラーは、ひきつづき「S太の非行」ではなく、「親子の会話を弾ませる」ことを勧めた。

ある日、S太の口から意外な言葉が飛びだした。いつものようにK雄からの夜遊びの誘いの電話のあと、浮かない顔をしていると思っていたら「もう!、テレビみたかったのに!」と、突然グチをこぼしたのだ。

よくよく聞いてみると、K雄からの誘いは最初は嬉しかったものの、つき合いが長くなるほどにK雄の無理強いが増えていったようだ。また、いわゆる「使いっ走り」もよくさせられていたことがわかった。「いつもあいつの都合ばっかりや」「パシリばっかりさせられる」「あいつは万引きも平気でやってる」「あんな奴、捕まったらいいねん」と、次から次にK雄に対する不満が口をついて出てきた。

「挫折」から「悪い先輩との夜遊び」へ。しかし…

ようやく両親の努力が実を結びはじめ、非行問題の解決も見えてきた。K雄からの誘いはつづいたが、家ではK雄の悪口が日課となり、他にもいろんな話題で盛り上がるようになった。カウンセラーからは、課題が達成できるたびに、非行問題解決にむけての次のステップ(課題)がアドバイスされた。

あのままS太を責めつづけていたらどうなっていただろう・・。

所長 福田俊一
担当 小川和夫(不登校・非行専門外来カウンセラー)